オーナーズボイス Vol.01服部真紀
組織のなかで見えてしまった未来の自分の姿に独立を決意
もともとは、会社に属するデザイナーであった服部さん。日々の仕事にやりがいと充実感は感じていた、と語る彼女が独立・起業に至ったきっかけはなんだったのだろう。
「あるとき将来の自分の姿が見えてしまったんです。このまま会社に従事して終わる人生ではなく、自分の好きなようにやってみたい、と思って退職を決意しました」。
昔から心に抱いていた独立願望が動き出した瞬間、だった。退職後、半年ほど販売員を経験。その後、27歳で独立。当初は個人事業として、同期のデザイナーが所属していた会社からパターンワークを外注し、自宅で作業を行う毎日。
その後、同じように個人事業でセキュリティ関係の仕事をしていたご主人が法人化する際に、事業部のひとつとしてアパレル企画のアウトソーシング事業を立ち上げ、現在の有限会社ケイフティーが誕生した。
仕事を求めて、求人を出している会社に営業電話
「会社を設立してしばらくは、一ヶ月まるまる仕事がない、なんてこともありましたよ」と笑う。その状況を打破すべく、求人雑誌に求人を出しているファッション関係の会社に、アウトソーシングの依頼の電話をかけたことも。そのとき依頼を受けた会社とは数年おつきあいが続いたそう。とはいえ、当初は企画の仕事はもらえず、ほとんどがパターンワーク。それでも、目の前の仕事を誠実にこなしていくなかで、人からの紹介により少しずつ仕事も増加。それも、彼女の仕事への真摯な態度と人柄によるものだ。もちろん、そのなかでも失敗はあったそう。日にちがないからと荒い仕事をしてしまい信用を失ったり、契約で軽々しく返事をしたら自分がすごい負担をかぶらなければいけなかったり…。でも彼女は言う。「すべて自分でなんとかできたこと。だから、次に同じことをしないように反省はするけど落ち込まない」と。落ち込んでいる暇があったら、そうならないために何をすべきかを考える。「デザインしたものが想い通りにあがってきたり、その商品がヒットしたり、お褒めの言葉をいただいたりすると本当に嬉しい」。その喜びが、 失敗してもなお彼女を動かし続けている。
公私におけるパートナーのご主人との二人三脚経営
会社の社長であり私生活でもパートナーであるご主人。
「私の仕事を100%理解してくれているので、家のことも色々サポートしてくれてます。自宅で仕事のアイディアについて議論することも多いんですが、経営者という立場で冷静に意見をくれる貴重な存在」。
そう話すように、公私において互いを尊重し尊敬し合う素敵なパートナーシップがあるからこそ、順調に、堅実な経営を行っていけるのだろう。
服部さんは、独立してから妊娠・出産を経験している。本人いわく「子どもを産んでから法人化したんですが、それ以降なぜか大きな仕事が増えてきた」のだとか。その理由についてはよくわからない、としながらも「無意識に図太くなったんでしょうね(笑)。きっと、本当の意味での覚悟がきまったんだと思います」というように、言葉を選びながらまっすぐにお話しされる姿に、母としての穏やかさと決して揺るがない太い信念が透けて見える。
すべてのタイミングが重なりKFMへ
独立して早13年。このKFMに会社を構えることになったきっかけはなんだったのだろう。
「神戸ファッションクリエイターズクラブという、神戸市が支援している団体があったんですね。個人でやっていたとき、ここ(KFM)の管理会社の方から、その団体に入らないかっていうお誘いを受けたんです。支援の一環としてスモールオフィスもあるからどう? って」。
ときを同じくして、自宅で仕事をしていた彼女のなかに「仕事とプライベート空間は分けた方がいい」という想いが芽生え始めていた。タイミングが重なったこともあり、KFMへの入居を決める。KFM内での何回かの引っ越しを経て、採光のいい現在の場所に落ち着いた。
KFM以外の事務所なんて…考えられない!
「自宅から近いからすごく便利(笑)。もちろんそれだけじゃなくて、給湯室や共有スペース、喫煙スペースなど、施設や設備が整ってるし、定期的にお掃除してくださっているので、いつもきれいに保たれているのが嬉しいです」。
このKFMの魅力をそう語る。清潔で閑静、仕事をするには最適な場所である、と。なかでも、一番嬉しかったのは「配送システムが整っていること!」なのだとか。
「ここは契約の配送会社さんが入っているので、定期的に集配に回ってきてくれるんです。その都度連絡してたら手間も時間もかかる。すごく効率的で、とても助かってます!」。
また、独立して間もない人には嬉しい情報も。「マートの方に色々相談すると、他のテナントさんを紹介してくれたり、ときにはそこから仕事が生まれたりすることも。そういうことも、KFMならではではないでしょうか」。
ここ以外知らないけれど、と前置きをして彼女は言う。
「この環境を考えたら家賃もすごくリーズナブル。マートの方もよくしてくださるし…ここ以外で事務所を借りるなんて考えられない!」
新しいファションビジネスのシステムをつくっていきたい
そんな愛すべきKFMに身を置きながら、今後どんな展開を考えているのか聞いてみた。「ひとつは、色んな国とつながって服づくりがしたい。その国の特性を活かしながら、その特性をうまく盛り込みながら、生産ができるシステムをつくりたいですね。そうやって色んな生産地と繋がっていきたい」と目を輝かせる。いつまでに、といった期限はきっていないけれど、そのためのリサーチを少しずつはじめている。そしてもうひとつ、彼女には実現したい夢がある。
「今って企画ありきの制作なんです。でも、企画する側と制作する側の距離が遠いのが現状。だから、もっと現場と密に繋がっていきたい。 今は使われていないけどすごい技術とか、お蔵入りしちゃったおもしろい技術とか、そういうものを今の時代に合ったカタチで制作していく。加工技術を活かした“技術ありきの企画”というものにシフトチェンジしていきたい」。
まだ漠然としたイメージだけなんですけどね、と笑う笑顔の奥に、時間をかけて構築してきた今の仕事での流れや仕組みを高めていきたい、という強い想いが垣間見える。
しかし、クリエイターとして独自のブランドを発信したい、という想いはないのだろうか。
「あまり考えたことはないですね。現実的に考えて気軽にチャレンジできることではないですから。それに、今は正直そこに魅力を感じない。それよりも、自分の持っている技術を使って“ファッションビジネス”がしたいんです。ビジネスとしてのファッションのシステムをつくっていきたい」。
基本的に仕事が好きなので目の前のことに喜びを感じられるタイプ…と自分を評する。だからこそ、 今のスタイルを変えてまで何か大きなことをしようとは思っていない。
「それなら、今の仕事のプラスαでしょ? 無理をしないで事業規模を拡げていける」。
自分ができること、目の前の仕事のなかから新たなアイディアを導き出し、静かに、でも内に根ざした深い情熱で、次のステージへ着実に歩を進めているーー。











